無理に曲げられたストレスで、柔らかく甘くなる「仙台曲がりねぎ」
お早うございます。ヒロくんです。
皆さんは「仙台曲がりねぎ」ってご存知ですか。
スーパーで並ぶ長ねぎは真っすぐですが、仙台長ねぎは名の通り曲がっています。
これは初めから曲がっているのでは無く、わざと曲げて作られた長ねぎです。
何か変!
と思っているあなた。
一度食べて見て下さい。とっても甘くて柔らかいですよ。
下の画像は普通の真っすぐな長ネギです。仙台曲がりねぎは後程。
去年初めて庭で栽培した長ネギです。見た通り短いですが味は良かったですよ。この辺は団地ですが、元々は農村で曲がりネギの発祥の地の近くでもあります。
現在は梨の産地としてもこの辺では有名です。主な品種は100年前に神奈川県の農地で発見された梨で、発見者の名前がつけられた「長十郎」です。
私はどっちかと言うと「二十世紀梨」が好きですね。
この地の近くで仙台長ねぎは生まれました。
今日はそれをご紹介します。
仙台曲がりねぎの特徴
普通の長ネギは先ほども書きましたが、ほゞ真っすぐですよね。
仙台のスーパー等でも真っすぐな物しか売っていないところが普通です。仙台圏の大型スーパーは関西系列が多いからかな。
個人経営のスーパーでは仙台曲がりネギが置かれています。勿論真っすぐな物もね。
私が子供の頃は曲がっている長ネギが普通に八百屋さんで売っていました。
でも道の駅とか郊外にあるJA関連の店とかで「曲がりねぎ」を売っていますね。懐かしい感じがする時があります。
何故かって「仙台曲がりねぎ」は辛みも強く香が良いです。
お待ち同様でした。仙台曲がりネギの画像です。
ネギは色々な物に利用される重宝な野菜です。
鍋料理にも欠かせない存在ですね。「仙台曲がりねぎ」は加熱されるとコクが増してきます。甘くなり、柔らかくなり更に美味しくなります。
大げさに言うと鍋の主役に躍り出ます。
この「曲がりねぎ」は仙台のどこで始まったのでしょう。また何故曲げられたのかを解き明かしていきましょう。
地下水が地上近く。ネギ作りには向かない土壌
曲がりねぎの発祥の地は何処でしょう。
仙台市の外れ、利府町という町がありますが、そこに境を接する岩切という町があります。明治時代の頃ですからまだ仙台市内ではなかったかもしれませんね。
少しこの地域を説明させていただきます。
南北朝時代の頃より岩切城という山城がここにはありますが、今は石垣だけです。かなり急斜面で、お花見には最適なところで11年前の震災で壊れましたが修復されました。
場所が多賀城と近く交通の要衝で近くには勿来の関跡もあります。
古代の岩切は東北最大の商業地域で、数多くの市場が出来たとか言い伝えられていますね。
この岩切は七北田川の流域に位置しています。
という事は土質も砂壌土で野菜作りには適しており、古くから仙台地域を代表する野菜の供給地域としては有名でした。
しかしながら、この地域は地下水脈が地上近くにあります。
当然、水はけが悪く湿度が高いので、長く伸ばす一般的な長ねぎを作るには適した場所ではありませんでした。
長ねぎを作る時に農家の人によく言われますよね。
「水をかけなくていいよ」って
本来、水をあまり必要としない野菜のようです。
それとも、元々水はけが悪いので、放っておいても水が浸み出すところが多いからかも。
種蒔きをして芽を出すまで水やりしますが、苗になった以降は余程乾燥した日が続かない限り水は必要ないですね。
確かに台風の大雨により長ネギが腐ってしまった事があります。
仙台曲がりねぎは水はけの悪い土地に生きる農民の知恵。
明治の末に岩切余目地域で「曲がりねぎ」が考案されます。
それは「やとい」という栽培技術の結果です。人によぅては「やどい」と言います。訛って(なまって)いるからかも。
考案したのは岩切の余目地区に住む永野一さんという方。少し掘ると湿った土が出て来るこの土地で、水に弱い長ねぎを何としても育てたい。
農家の人の野菜作りに対する執念を感じます。
仙台曲がりねぎの栽培方法。「やとい」が決め手。水はけの悪さを克服。
それでは「仙台長ねぎ」の栽培方法をご紹介します。
「やとい」の栽培は
それなりに育った長ねぎを抜いて植え替える頃、時期的には初夏の頃でしょうね。
- 30度の傾斜をつけた斜面を作る
- その斜面に抜いた長ねぎを寝かせる
- 葉の分かれ目の下近くまで土をかける
すると
- ねぎは太陽に向かって伸びて行く 曲がりながら成長
- 土を被ったところは勿論白くなる
- 曲がる事のストレスにより白い部分が多くなる
- 3㎝程度の太さの肉厚に育つ
うまく出来た時は喜んだでしょうね。
しかも太くて甘い。
「やとい」で曲げるのがポイント
本来持つ「やとい」の意味とは違うようですね。
無理にこじつけるとすれば「臨時」が良いようです。
「収穫する長さに成長しない長ねぎを、臨時に長く成長させたい」
取り合えず、こう解釈します。
30度の傾斜が付いているので、葉の先が斜面が邪魔で本体と同じ様に伸びない。太陽の光を浴びたくて、止む無く曲がって太陽に向かって伸びてしまった。
しかも浅く植えてあるので下の湿った土の影響を受けない。
「あっ、これなら伸びるぞ。でも、いずいな」
「いずい」とは居心地の悪さの時に言う東北弁です。
これがストレスとなります。
このストレスが柔らかさと甘みを増幅させました。
岩手とかにも広まったようだ
岩手の一関あたりでも盛んに曲がりねぎを栽培している様です。ここも水はけの悪い地だったのでしょうか。見た感じではそう思えませんが。
何れにしても「仙台曲がりねぎ」は、水はけの悪い農地に悩む農民には物凄い助け舟となりました。
長ねぎの効能と選び方
食物繊維や葉酸が多い。
臭いの成分はアリシンでビタミンB1の吸収を高める効果を持ちます。アリシンやネギオールは白い部分の香気成分ですが抗菌作用があります。
選び方は
- 葉が濃い緑色でツヤがある
- 白と緑の境目がはっきりしている
- 軟白部分にツヤがある
後書き
「仙台曲がりねぎ」の事を書いてきました。
小さい頃に食べたのがそうだと思いますね。
食べなくなったのはすき焼きを食べるようになってからかな、長ネギは真っすぐというのが定着したのかもしれません。
私は家庭菜園を始めた時に、お店で売っている様な真っすぐで長いねぎを目指してきました。それが普通だと思っていましたから。
でも、ある時「仙台曲がりねぎ」は岩切で始まったんだと農家の古老に聞きました。
岩切は隣の町です。
意外に身近なのに知りませんでした。
でも感心しただけで、その後も真っすぐな長ネギを目指していました。ところが最近、駄目という訳では無いのですが長ねぎの生育が良くありません。
台風や大雨のせいかなと思っていましたが、どうもそうでは無いようです。
一昨年で終わりましたが、借りている畑の前に用水路があり、それ工事が始まりました。
その脇が県道です。
噂では町道に格下げになったとか(?)。
用水路は新しく土管が設置され、暗渠(あんきょ:地下)になりました。
後ろ側にも小さな川があります。
この畑は両側を川と用水路に挟まれている訳です。少しずつ川の水が地下で迫って来ているのでしょうか。
だとすれば長ネギが駄目になるものが増えている。その理由が分かってきましたね。
そんな訳で、今後は私も「仙台曲がりねぎ」を作らざるを得なくなりそうです。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。